祈りは永遠に。

60:後悔

 私たちが着いたときには既にアルビオールが二機あったから、もうあちらはリグレットと戦っているだろう。私はアリエッタと二人、極力戦闘を避けながらどこまでも白いエルドラントをひたすら走る。ライガのいない今、アリエッタはただの後衛だ。後衛二人じゃ分が悪い。
 大きな扉の前まで到着したところで、ぱぁんと銃声が聞こえた。
「――リグレット!」
「っ、にアリエッタ……!」
「おやおや、遅いですよ……っ、エナジーブラスト!」
 ジェイドが譜術を放つと同時に、私はアリエッタと一緒にナタリアの隣に並ぶ。
「――セッシブバレット!」
 リグレットの銃が唸り、弾はナタリアの矢とアニスの譜術を弾き返した。その隙を見て私はすぐに詠唱を始める。
「悠久の時を凍て尽かせろ!」
 ガイがリグレットに斬りかかろうとするのをアリエッタが阻止した。ごめん、リグレットを殺させるわけにはいかないんだ。
 第四音素がリグレットの足の周りに広がり、ぴきぴき、凍り始めたそれは彼女の動きを奪う。リグレットがしまった、という顔をしている間に私は次の術を詠唱した。
「――聖なる雨よ降り注げ!」
「この……っ!」
 譜業銃のグリップで氷を割ろうとしたリグレットだったが、私の譜術が放たれる方が一歩早かった。彼女の頭上から幾筋もの光が降ってくる。
……あなた、この術……!」
 がらん、と譜業銃を落とし、リグレットは膝から崩れ落ちた。そんな彼女に慌てて駆け寄ったのはティアだ。彼女は凍傷寸前の彼女の足首に手を当て譜歌を歌い始める。
「そうだよ、リグレット。私が初めてリグレットと戦ったときに使った術。リグレットはそれを覚えててくれたんだね。……レプリカになってしまったら、この記憶も忘れちゃうんだよ?」
「です……アリエッタ、や六神将のみんなとのこと、忘れたくないもん……! リグレットも、そうじゃないの?」
 ガイのところからアリエッタがとてとてとこちらに歩いてくる。アリエッタはすとんと座ると、リグレットに手を差し出した。
「アリエッタ……あなたまで」
 譜歌を終えたティアはアリエッタに倣い、リグレットに手を差し出す。
「教官……私まだまだ教官に教わりたいことがあるんですよ?」
「……ティア、済まなかっ、た」
 リグレットの瞳から大粒の涙が零れた。ヴァンを止めて、早くリグレットに会わせなくちゃ、なあ。彼女がその名の通り、後悔をする前に。
 二度目の後悔を、しないように。


2015.12.15 柿村こけら



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