世界の果てでは雨が止む

22:交渉

「闘技大会?」
「うん。キタル族のユルゲンスさんが、それで優勝したらワイバーンを貸してくれるって」
 私の足に巻かれた包帯を替えながらジュードが告げる。レティシャさんの家を出た後、私は街中でアルヴィンとばったり会ったことにして宿へと戻ったのだが、先に帰っていたジュードにこっぴどく叱られた。一日は休んでなくちゃ駄目! とかなんとか言われて。

「……言っておくけど、私も出るからね、それ。もう痛くないもん」
「んー……まあ、もう腫れてもいないし大丈夫だとは思うけど。痛くなったらすぐ僕に言ってよね?」
「はーい。ありがとね、ジュード」
「どういたしまして。それじゃあ、おやすみ」
 先に寝てしまたエリーゼをちらりと見てからジュードは部屋を出る。それにしても闘技大会、ねえ……もうそんな時期だったのか。それなら街が賑わっていることも納得だ。

 ティポを抱えて眠るエリーゼに布団を掛け直してから私は室内の明かりを消す。ところで、シャン・ドゥの闘技大会って、どこの部族も魔物を操るんじゃなかったっけ……そう思いながら、私は目を閉じた。



「聞いてないよっ、もうー!」
 息を荒げながらレイアが棍を振り回す。案の定魔物を使役していない参加者は私たちだけで、所詮からずっと相手は魔物使いの部族たちだ。
 それでもここまで勝ち抜いて、この試合で予選は終了。唯一魔物を使わない参加者ということで注目されていたらしく、アナウンスは何度も私たちを優勝候補の一角と実況していた。
「あんまり喋ると舌噛むよレイア! 満ちよ流水!」
 エリーゼとのリンクを切ってレイアと繋ぎ直す。私の詠唱を聴き終えた彼女は大きくジャンプして、渦の中へと飛び降りる。
「兎迅衝ッ! 続いていっくよー!」
「「水月烈破!!」」
 飛び散った水が鋭く尖り、魔物の上に乗っていた選手を叩き落とす。主を失って右も左も解らなくなっている魔物の鼻先をアルヴィンが撃ち抜けば、魔物は音を立てて倒れた。
「よしっ!」
「あと一体! ……! アルヴィンもっ!」
 最後の一体に向かって私とアルヴィンが同時に銃を向ける。水を帯びた弾丸は地面を波打たせ、完全に魔物を取り囲む。右往左往する魔物の足元をジュードが蹴り飛ばして、タイドバレットの勢いを利用して拳を突き出した。
「「「転留追刃穿!!」」」
 三人の声がぴったり重なる。横に伸びた水は魔物の巨体を噴き上げて、動きを完全に失わせた。

『おーっと、決まったか!? 決勝に進むのはキタル族だ!!』
! アルヴィン!」
 嬉しそうな顔でジュードが私たちに駆け寄ってくる。私はホルスターに銃を戻すとジュードとハイタッチをした。小気味よい音が歓声たっぷりの闘技場に響く。
 ユルゲンスさんが出口で大きく手を振っていたので、私たちは惜しみなく送られる拍手と声を背に受け、会場を後にした。




2015.01.26 柿村こけら



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