世界の果てでは雨が止む

69:配下

「お前たち……とうとうここまで来たのか……」
「アルヴィン……どうして……」
「ジュード…………っ、俺は!」
 ちらりとアルヴィンが隣のプレザを見る。プレザの隣に並ぶ彼を見るのは何年振りのことだろう。まるで仲間のように並ぶその光景を。

「……ウィンガルはあんたを危険視してる。陛下の心を惑わすかもしれないってな」
「だから私たちが手を組むのはもう終わりってこと。あなたとの共鳴術技も、あれが最初で最後よ」
「……そうみたいね。だけど、あなたたちの王様は絶対に信念を曲げないミラみたいなタイプだと思ってたんだけど、意外とそうでもないのかしら?」
「何だとブス!」
 足場の悪い岩先にアグリアが剣杖を突き刺す。それを合図にしたようにプレザが本を開いた。その横でアルヴィンはというと、戦闘が始まることを恐れているようだった。

「アハハハ! またあんたたちをいたぶれるなんてサイコー!」
「あなたたちとは決着をつける機会がなかなかなかったけど、今度こそここで死んでもらうわ」
「おい、やめろアグリア、プレザ!」
「邪魔だニイちゃん! やる気ねーならどけ!」
 幸いあちらはいくら強いといったって術士が二人。アルヴィンを入れたとしてもそれを上回る戦力がこちらにはある。といっても小回りのきく戦闘は出来なさそうだけど。銃をホルスターから引き抜いてこちらも共鳴を始める。私はジュードと、ローエンはレイアと。エリーゼはティポを近くに引き寄せて詠唱の準備を整えていた。


「アルヴィン! 僕は何としてもマクスウェルに会って、真実を確かめる。自分がこれからなすべきことを見定めるために! 前へ進むために!」
「お前……ッ!」
「君はどうする!? ねえアルヴィン!」
 アルヴィンが何か言うより先にアグリアの放った火球が飛んでくる。空気の読めないお嬢様め。

「タイドバレット!」
『ワキワキの手〜!』
「ネガティブゲイト! レイア、今ですっ!」
「オッケー任せて! ローエンお願い! せーのっ、」
「「流舞崩爆破!!」」
 次々に流れるように放たれた技を躱しながらもプレザは苦しそうだった。すかさず本のページを捲ってアグリアと共鳴する。

「覚悟がねー奴はすっ込んでろ! あたしはな、陛下を裏切る訳にはいかないんだよ! おいババア、あんただって同じだろ!」
「そうね……陛下は私たちのようなゴミとされた人間まで傍らに置いてくれた。その陛下の役に立つことが、私たちの存在意義」
「待てよ二人とも……っ、話を!」
 武器を構えてすらいないアルヴィンをアグリアが蹴飛ばした。それから炎が彼女の周りを包むように舞う。
「灼熱の炎霧!」
「全てを満たせ!」
「「――レイジングミスト!!」」
 アクアプロテクションを――いや、無理だ。炎が混じっていては吸収出来ない!
 詠唱中のローエンとエリーゼ、それから治癒術を使おうとしているレイアを守るようにジュードがマナを放出する。けれどそれだけでは足りなくて。

「死ねブス――――ッ……!?」
 からん、と剣杖が地面に落ちる。放たれたレイジングミストを受けてふらつく身体を叱咤して前方を見れば、銃を構えたアルヴィンが呆然とした顔でこちらを見ていた。まるでハ・ミルでレイアを撃ってしまったときのように。
「アル……どうして……っ!」
「いや……俺はただ……」
「はっ……やってくれんじゃねーか。やっぱお前は信用できねー!」
 撃ったことが信じられないのは他ならぬアルヴィンのようだった。仲間割れをしている間に、エリーゼとレイアの治癒術が私とジュードの怪我を治してくれる。

「アルヴィン!」
 ジュードの声に、アルヴィンは泣きそうな顔で彼を見た。
「……俺は、アグリアの言う通り、どこまでいってもこういう人間なのかもしれないな」
「アルヴィン……」
「アル……っ!」
 アルヴィンの手にした銃のロックが外される。その銃口は、プレザに向けられていた。

「……ごめん。アル。――あなたはやっぱり私の敵っ!」
「アルヴィン!」
 エリーゼが即座にアルヴィンと共鳴する。今にも崩れ落ちそうな岩の上に、プレザの涙が落ちたのが見えた。




2015.06.27 柿村こけら



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