DCnn
でもそれってボクの愛なの
※エセ関西弁でおまんがな
「そんでなあ! 平次が『離したら殺すぞ』って言ってくれてん!」
「えーっ! 和葉ちゃんもうそれ絶対服部君和葉ちゃんのこと好きだよー!」
「いいわねぇ……私も真さんに言ってもらいたーい! キャー!!」
「マジで羨ましいね……????」
あっ一人だけコメントが女子高生じゃなくなってしまった。
すみません私です。私が犯人です。……いやでも、そんなの、言ってもらいたさすぎるでしょうよ!?
ていうかそれを言われる状況、聞いている限り命の危険が迫っているわけなんですけど。私も人のこと言えた義理ではないですがみなさん危機的状況に巻き込まれすぎじゃないですかね? 蘭ちゃんなんて護衛艦の上から海に投げ出された死にかけたとか言ってたじゃん前。なんだこの集まり。
なんてツッコミを脳内で介しつつ、私は立ち上がってドリンクバーへと向かう。ダニーズも前はドリンクバーとかなかったのにいつの間にやらこんなことになったんだか。ピンクレモネード好きだったんだけどなあ……と言いながらファンタレモンのボタンをタップ。まずドリンクバーがボタン式じゃなくなってることにもビビるわけではありますが。
「でも蘭ちゃんも工藤君に告白されたんやって? 羨ましいわ〜! 平次も見習って欲しいくらいやわ!」
「そーなのよね。でも蘭ったら返事してないのよー! 早く付き合っちゃえばいいのにって私言ってるんだけどね?」
「も、もう……! だって新一、すぐいなくなっちゃうし……ロンドンの後、どこにいるか解んないしさ……」
「ちゃんと世良ちゃんはまだ工藤君に会ったことないわよね? 蘭のダンナ……修学旅行には流石に戻ってくると思うけど」
「えっ、そうなん? ちゃん工藤君と会ったことあらへんの!?」
「……うん、ないよー。噂だけはよーく聞いてるんだけどね」
これはコナンくんを守るための嘘なので許してくれ。まあ正確に言えば「工藤くん」には会ったことないですね。コナンくんという名の工藤くんには週に何回も会っているが。ていうか修学旅行か、そっか……そんなイベントがあったんだった。行き先は京都、なんともベタである。けれどこういうのはベタであればあるほどいい。ベタ、最高! 真純と紅葉狩りデートができるやもしれない!!
……でも工藤くん、戻ってくるとしてどうするんだろう? 哀ちゃんから話を聞いただけだが、確か薬を飲めば一時的に大人に戻れるのだったか。効果が切れるとコナンくんに戻るわけだし……ま、これは私が考えることじゃないか。何かあったら貸し一つ、そういう関係だし。
「修学旅行じゃ流石にバイクは無理だよなあ……」
「ん? さっきの和葉ちゃんの話?」
「私も真純に同じことしてもらいたい……紅葉の中を駆け抜けた上でめちゃくちゃかっこいいセリフを言ってもらいたい……」
「でもちゃん、いつも世良ちゃんのバイクの後ろに乗ってんじゃないの。ラブラブでーす! って感じで登場しちゃってさー。あぁ、真さんもバイクの免許取ってくれないかしら……!」
「京極さんはバイクっていうよりおんぶして運んでくれそうな感じするけど……」
「……それもアリね。今度頼んでみようかしら……」
ふむふむ、と真面目に考え出す園子ちゃん。工藤くんはバイク免許持ってないから無理か。まあそもそも元の姿に戻らないといけない弊害がありますが。
和葉ちゃんはお気に入りだというダニーズのカレーをぱくぱく食べつつ、正面の園子ちゃんがトリップしているのを見ていた。
「にしても世良ちゃん、遅いね? コナン君と服部君と調査に行ったの、もう二時間は前だと思うけど……」
「基本的に嫁より謎の方が大事な人種だから、あの人たち」
「せやなー。平次、いっつも走っていってまうもん」
探偵とはそういうものだ。真純もコナンくんも服部くんも。でもそういうところが好きなんだけど。てへ。惚気です。
とは言えなかなか戻ってこないのは事実。さっきからちらほらスマホを確認しているけれど、真純から連絡が入る様子はない。コナンくんと服部くんもしかりだ。んんー……危ない目に遭って……ないか。流石に。真純の戴拳道と服部くんの剣道があれば大抵の人間は地に膝を付く。コナンくんだってサッカーボールと麻酔銃で不審者の一人や二人撃退できるはずだ。
仕方ない、もう少しガールズトークに花を咲かせた上で、後でコナンくんに蘭ちゃんの惚気を教えてやるとするか……なんて思って再び席を立ったところで、からんころーん、とドアベルが鳴った。コナンくんが捕まった宇宙人のように、真純と服部くんの間で手を繋がれて揺れている。
「三名様ですか?」
「ううん、待ち合わせだよ。えーっと……あ、!」
「かしこまりました。あちらへどうぞ」
ぺこりとウェイトレスのお姉さんが頭を下げて去っていく。コナンくんの手を離した真純はたたたっと走ってきたと思うと、私に飛びついて無事着地した。
「お疲れ様。何食べる?」
「イチゴパフェにしよっかなー。あ、その前にドリンクバー行ってくるよ!」
「いってらっしゃい。走ると転ぶわよー」
グラス片手に消えていく真純。コーナーを曲がって今頃ファンタグレープとオレンジで悩んでいることだろう。
「で、成果のほどは?」
「流石に三人もおったらなんとかなるっちゅうねん」
「、蘭たちは?」
「あっちでガールズトーク中。今は和葉ちゃんが『平次が手ェ離したら殺すぞって言ってくれてん!』って惚気てて、蘭ちゃんが『新一、どこにいるか解んないし……』って落ち込み中。基本的に情報は筒抜け、共有されてると思ってください」
「こっぱずかしいことしよるなァ……! ったく、和葉の奴……!」
「あ、待てよ服部!」
席番を伝えれば二人はそちらへ消えていった。私もドリンク取りに行こうとしてたんだったと思い直し、進行方向右、真純が待っているであろうドリンクバーへと向かう。まだ決めかねているらしい。グラスには氷だけが入っていた。
「真純」
「。やー、いっぱいあると迷っちゃうよな。コナン君たちは?」
「先に蘭ちゃんの方に行ったよ。……ところで真純、お願いがあるんだけど」
「うん? なーに?」
「今度バイク乗ってスピード出すときがあったら『ちゃんと捕まってないと殺すよ』って言って欲しい……」
「どういう状況だよ、それ……」
「和葉ちゃんが服部くんに言ってもらったって言ってて……羨ましいから……私も真純に『殺すよ』って言われたいなあって……」
「歪んだお願いだなあ。できればボク、をそういう状況に巻き込みたくはないんだけど……」
そりゃ私だってそうである。ベルツリータワーの一件で真純が大怪我したときには冗談じゃないくらい辛かったし、赤女事件で私が怪我したとき、真純もそんな顔をしていた。だからそんな状況、ならないに越したことはないのだけど。
「でも気分的に言ってもらいたさがあるんだよね……できれば劇場のでかいスクリーンで……」
「、メタ発言だよそれ」
「ううっ……私の精神安定のために言って欲しい……」
「んん〜……」
真純のない胸に縋り付くと頭上から「どうしよっかな〜」みたいな声が降ってくる。ところでさっき言ってたイチゴパフェってもしかして一つ三千円近くするでかいやつじゃない? 私あれ食べ切れる自信ないな……蘭ちゃんとかはスイーツビュッフェ大好きだからいけるクチなのかもしれないが。
「」
「は、はい!?」
「今ボクじゃないこと考えてたでしょ」
「え? あー……うーん、正確には真純も関係してること考えてたけど……うーん……イチゴパフェのこと考えてた」
「……ボクのこと考えなかったら、殺すよ」
「〜〜ッ……!!!!」
ちょっと照れながらそう告げる真純は、とんでもない爆弾を落としていく。かわいい。かっこいいというより可愛いになってしまった。見てこれ私の彼女です。可愛いでしょ!!!!
「真純」
「……なに。言っとくけど今の、結構恥ずかしいんだからさ……」
「末は真純と死にたい」
「ってさ……案外、愛が重いよね……?」
「ん〜? 今更でしょ、もう逃さないもん」
氷だけのグラスを奪い取ってファンタグレープを注ぐ。私は何飲もうかな。
2018.04.19 柿村こけら
から紅地上波おめでと〜!
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