ワールズエンドワルツ

03:お前何で来てんだよ!

「やあくん。調子はどうだい?」
「絶好調ですー。それで、忍田さん? わざわざ早紀ちゃん経由じゃなくて、個人的に呼び出したってことは何かありました? 私最近何かしましたっけ……」
「君自身は何もしてないよ。こちらからの個人的なお願いがあって呼んだんだ。……玉狛の空閑くんのことは知ってるよね?」
「米屋から聞きました……近界民で、黒トリガー持ち。それで?」
「城戸さん一派がその黒トリガーを無理矢理奪おうとしている。丁度遠征部隊が帰還したから、三輪隊に合わせて風間隊までが合流して玉狛を狙っている」
 そういえば今日、遠征部隊が帰還する日だっけか。いーなー出水、何か面白いものあったかな。……と、これは後回し。
 それにしても風間さんたちまでが、ということは……トップチーム含めて四隊が合同で戦ってるのか。

「豪華面子ですね。忍田さんはそれに不満がある、と」
「不満……まあそういうことになるな。迅が慶たちを止めに行くと言って、こちらから嵐山隊に協力を申請した」
「……迅さんに合流して戦え、ってことですね?」
「ああ。草壁くんは不在だから、こうして直接言わせてもらうよ。……くん。慶たちを止めてくれるか?」
「――そんなの、決まってるじゃないですか」
 A級1位、太刀川隊。攻撃手1位、太刀川慶。何度ランク戦挑んでも勝てない相手。最近じゃ戦ってくれない相手でもある。太刀川さんだけじゃない。あっちはほぼ全員私より強い。
「合法的にバトれるなんてこの上なく最ッ高! ありがとう忍田さん!」
「はは……それじゃ、悪いけどすぐに向かってくれるか。時間的にはもう始まる頃合いだ」
 忍田さんにお礼を言って部屋を出る。すぐに通信を嵐山隊のオペレーター・綾辻ちゃんに繋いだ。
さん?』
「忍田さんからの指示。私も嵐山さんたちに合流するんでデータください」
『解りました。こちらは嵐山隊と迅さん、相手は太刀川さん、出水さん、当真さん、風間隊、三輪隊。全員現着済みです。こちらの部隊は迅さんと嵐山隊で分散している状態ですね』
「はーい。どっち行けばいい?」
『市街地の……今マップ出します』
 視界に情報とレーダーが出る。その指示に従ってトリオン体に換装した私はビルの上をぴょんぴょん飛び跳ねて進んだ。あー、こう言っちゃ悪いけどありがと忍田さん。好きなだけ戦える。全力で。ていうか太刀川隊と三輪隊ってことは出水と米屋もいるじゃん。でもまあいっか。友達でもそれはそれこれはこれ。

 廃屋になっている民家の屋根の上を陣取って下を見遣れば、丁度三輪が嵐山さんに文句を言っているところだった。けど嵐山さんに言い負かされたようで言い淀んでいる。
「――戦るならさっさと始めようぜ」
 出水の両手にバカでかいトリオンが現れる。うっわ、相変わらずえげつないトリオン量だ。この弾バカめ。
 でもその短絡的な考え方に関しては大いに同意。私は立ち上がってトリガーを起動させる。スコーピオン――ではなくバイパーを。私はバイパーを使ってこそいるが正直仕組みはよく解ってない。テキトーに撃てば何かしら当たるだろ。出水みたいに千発も撃てないけど、撃って当たらなかったら斬り殺せばいいだけの話。
さん。佐鳥が出水さん狙ってますけどどうしますか?』
「先に私出ていい? さぁとりー、聞こえてるー?」
『はい、佐鳥聞こえてますよー! 了解です先輩ッ!』
「ありがと」
 言うが早いかばーん、とバイパーをブッ放す。流石に当たりはしなかったけど撹乱くらいは出来たし派手な登場も演出できた。全員の視線がこちらに向けられる。

「ッ、、テメー……!」
「お前何で来てんだよ!」
「忍田さんが好き勝手暴れてきていーよって言ってくれたから乗っただけー。それより太刀川さんいないの?」
「残念、太刀川さんは迅さんと戦り合ってるよ」
……チッ。
 スコーピオンに切り替えて屋根の上から道路に着地する。木虎はちょっと不満そうに私を見ていた。
「……まーいいや。草壁隊、現着です。嵐山隊に加勢しまーす。そういや嵐山さんに借りあったし」
「え? 俺何かしたっけ」
「一年前に私が緑川とバトんの許可してくれたじゃないですかー」
 お陰で緑川取れましたし、と言えば嵐山さんは苦笑いを零した。この人基本誰にでも優しいからそれくらい大したことないと思ってるのかもしれない。

「……ま、そーいうことだからさ。出水ィ、久々にちゃんと戦り合おっか」
「言うじゃん!」
 両手のキューブが巨大化する――のを狙って、佐鳥の弾丸が出水を狙った。……はず、だった。
「な……っ!?」
「……なんちゃって。佐鳥見っけ」
 にやり、いやらしく出水が笑う。両攻撃と見せかけた両防御で佐鳥の場所を炙り出したのだ。
「陽介。狙撃手を片付けろ」
「オッケー」
 去っていく米屋を木虎が追う。米屋でもいいかなと思ったけど、出水が遠征に行ってる間ずっと米屋と戦ってたから飽きた。ってことで私の狙いは出水でいこう。

「私どうせまともに指示聞かないんで、適当に嵐山さんカバーしますね」
「……そういう奴だよな、は。じゃ、行くぞ充、!」




2015.08.05 柿村こけら


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