JOGIO

身長差は23センチ

――身長差は23センチ。
「っ……ふぁ、あっ……んっ、んっ……うぅ、ううっ……ちゅ、ちゅっ……は、あっ……」
「ん……っ、んぅ、うっ……れろ、れろっ……」
「ふぁ……う、ぁ……んっ、んっ……ふぁ、ちゅ、ちゅっ……」
 だから、立ってキスをするとなるとこんな風に限界ギリギリまで背伸びをする羽目になる。典明くんは屈んでくれているけれど、それでもこの身長差はなかなか埋まらない。ていうかわたしたちでこのザマなんだから、承太郎くんなんてもっと大変に違いない。ジョースターさんもそうだ。奥様とキスするとき、たぶんめちゃめちゃ屈んでるんだと思う。
「っう、ぅ……!」
 もう億劫だとでも言うように、腰に回された腕に力が入った。緑の長ランを纏った彼は、そのままひょいとわたしを抱き上げる。足元にふわり、優しい感覚。いつの間にか現れていたハイエロファントが、身体を解いて触脚をわたしに伸ばしているのだ。唇をくっ付けて舌を絡めたまま、わたしは典明くんと余計にくっ付く。口の中を掻き混ぜられるのは嫌いじゃない。舌遣いがいやに巧いから、わたしはいつもキスをする度にどろどろに融かされていく。まるで触れ合った口から一つになってしまうようなこの感覚は、きっと彼とじゃなきゃ味わえない。
「んっ……ん、ぅ、うっ……ふぁ、あっ……ちゅ、ちゅっ……んぅ、うっ……は……」
「れろ、れろっ……ちゅ、ちゅっ……んっ、んっ……」
 薄く目を開ければ、ピンクがかった前髪が目の前で揺れる。流石にそろそろ息も苦しくなってきて、わたしはトントン、と典明くんの胸板を叩いた。菫色の目がひらいて、名残惜しそうに唇をゆっくりと離した。
「は、あっ……はあ、はあっ……」
 唇に残った唾液をぺろりと舐める。わたしの身体は典明くん(とハイエロファント)に捕まえられたままで、なんだか捕獲された宇宙人みたいな気分だった。典明くんはじ、とわたしを見下ろすと、地面に下ろしてくれることはせずに座ってしまう。自動的にわたしは彼の膝の上に乗る形になった。すっぽり。猫みたいだ。
「……
「ん……」
 長い腕がわたしを絡め取る。真上に視線を投げれば、典明くんの寂しそうな目がこちらを見ていた。ぎゅっと抱き寄せられたままに、わたしは手を伸ばして彼の頭を撫でてやる。一つ歳下の彼は、それを待っていたとばかりに頭をわたしの方へと差し出した。
 ハイエロファントが消えて二人きりになった部屋の中で、わたしの手だけが音を立てる。典明くんが頭を下げているので、身長差はただいま5センチくらい。すぐ近くにいると落ち着くような気もするけれど、やっぱりわたしは見上げた先に彼の顔がある方が好きだな、なんて思った。



2021.10.23 柿村こけら


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