世界の果てでは雨が止む

28:雪原

「さっむーい!」
 約束通り優勝した私たちは、キタル族からワイバーンを借りることが出来る。しかし、空を飛ぶにはア・ジュール王の許可が必要だとのことでユルゲンスさんがカン・バルクに向かうことになった。
 ジュードはエリーゼがいた研究所の内情を聞きたいと言い出して、結局私たちもユルゲンスさんに同行することとなり、今に至る。
 カン・バルクに行くためにはモン高原を抜けていく必要があるので、私たちはシャン・ドゥで防寒具を揃えてからダーク地下道を抜けた、のだが。

「手がかじかむのは嫌だなあ……うー、寒いっ」
『そんなに寒い〜? ぼくは平気だけどー』
「えー、嘘っ! わたしは超寒いんだけどな」
『レイアの言うことなんて聞いてないのにー。レイアはうるさいなー』
 ティポの辛辣な言葉に、レイアはうぐ、とゲコゲコの潰れたような声を上げる。エリーゼは足元の雪に足を取られることなく歩き、吹雪の奥を目指していた。

「……ねえ、エリーゼ。もしかしてエリーゼは昔ここら辺に住んでたのかもね」
「わたしが……ですか?」
「うん。雪に慣れていない人に雪原は歩きにくいでしょ? ユルゲンスさんやアルヴィンは歩けてるけど、ミラやローエンはちょっと手間取ってる。エリーゼはちゃんと歩けてるから、もしかしたらと思ったんだ」
「雪……あんまり覚えてないけど、でも初めてって気はしない、です」
『ホントに住んでたことがあるのかもー!』
 エリーゼの表情が少しだけ明るくなった。いつかは裏切らなきゃならないなんて解ってる。でも、どうしてだろう。同じような境遇で育ったからだろうか、エリーゼには私と同じ道に進んで欲しくなくて、つい構ってしまう。
「落ち着いたら、、わたしと一緒にまたここに来てくれますか?」
「……うん、いいよ」
 そう言うと、彼女の顔がぱあっと明るくなる。
 わーい、と嬉しそうに飛び回るティポを尻目に、私は殺気を感じ取った。これは魔物のものだ。通商路もあるモン高原だが魔物が出ない訳ではない。

「ユルゲンス、お前は下がっていろ」
「あ、ああ」
 ミラがマントの下から剣を引き抜く。吹雪の奥から現れたのはスノウトータスとスノウウォントだ。
 すかさずジュードがアルヴィンとリンクを繋いで殴り掛かっていく。この手の魔物の弱点は火属性だ。何とも相性が悪いなあ、と思いながらエリーゼと共鳴する。
「穿て、大いなる奔流! アクアゲイザー!」
「湧き出でよ!」
『ワキワキの手!』
 エリーゼとティポのネガティブゲイトが魔物を巻き込む。その中心にアクアゲイザーを当てることで、共鳴によって二つの技が一つになる。
「「アブソリュートッ!」」
 だが、やはり水属性も入っていると大した効果がないらしい。私の銃はアルヴィンのものとは違い、水属性に特化している。
『あんまり効いてないー!?』
 前衛の三人も、慣れない雪原での戦闘で手こずっているらしい。ウォントの攻撃で傷付いていた。

「……エリーゼ。レイアと共鳴出来る?」
『えー! ぼくイヤだよー』
「お願い。回復出来るのはエリーゼとレイアだけでしょ? ジュードは今、前にいるから」
「……わ、解りました……」
 ぱしゅ、と共鳴を切って、エリーゼはレイアと共鳴して詠唱を始める。私はレイアと共鳴していたローエンと共鳴し、前衛に加わった。ローエンとの共鳴効果で、魔物の放つ魔術は勝手にガードされる。

「白き精霊舞い、祝福の羽踊る!」
「心気を癒し整えよ! 万象活性!」
「万物に宿りし命、」
「その息吹をここに!」
「「――リザレクション!!」」
 ぱあっと明るく優しい光が私たちに降り注ぐ。エリーゼは不満そうな顔をしながらもちゃんと役割をこなしてくれたのだ。

「落ちろッ! 鳳墜拳!」
 回復したことですっかり動きやすくなったらしいジュードが最期の一匹を蹴り飛ばす。ちらりとローエンを見れば、満足そうに笑っていた。




2015.05.29 柿村こけら



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