世界の果てでは雨が止む

73:運命

「竜王随風、人魔を裁斬せよ! サイクロン!」
「きゃあっ!?」
 風の精霊たるシルフを配下にもつその力は人が相手取るレベルじゃない。突風がレイアの身体を軽々と吹き飛ばす。

「アルヴィン!」
「おうっ!」
「「ストロングバレット!!」」
「ぬるい!」
 指を揺らしただけで風が巻き起こり、弾丸を全て弾き飛ばす。椅子から立つこともなく、マクスウェルはただ淡々と私たちの攻撃をいなしていた。

「だああああっ!!」
『いっけえー、ジュード〜!』
「鳳墜拳!」
「援護しますよジュードさん! マーシーワルツ!」
 勢いよくジャンプしたジュードは炎を纏って落ちてくる。その隙間にローエンが剣先を入れようとしているのを視認して、私はエリーゼと共鳴する。
「蒼き引力の覇者よ! 旋渦となりて厄災を退けよ!」
「薙ぎ払え葬送の鎌、名は煉獄!」
「「血のように紅い薔薇よ咲け! ――ブラッディローズ!!」」
「くう……っ!」
『やったの!?』
 三つの攻撃がぴたりのタイミングでマクスウェルを吹き飛ばす。散った薔薇の花びらは、水面に落ちる前にふわりと消えた。

「……いーや、まだみてえだぜ」
 アルヴィンの銃からからんと薬莢が落ちる。煙の向こう、ゆらゆらと身体を揺らしながらマクスウェルが立ち上がっていた。
「愚か者め。何度やっても結果は同じだと解らんのか!」
「違う! 愚かなのはあなたの方だ。ミラの……人の心が解らない愚か者だ!」
「言わせておけば……! 貴様たちには付き合っておれん。これで終わりにしてやる。――廻り踊れ地水火風!」
 マクスウェルがいつぞやのミラのように魔法陣を描く。四色の光はマナを放出し、マクスウェルの周囲に渦を巻き始める。

「これは……四大精霊!?」
「生ずるが如く、滅するが如く、真央に集いて我が鉄槌となれ! エレメンタルメテオ!」
 天空に描かれた魔法陣から次々に巨大な球体が落ちてくる。その一つ一つが四大と同等の力を持っていた。全てを避け切ることなんて出来ず、私たちは必死に走り回る。
 せめて水の球体だけでも吸収出来れば。落ちてくる水色の球体に飛び込む。思ったとおり、それはウンディーネの力そのものだった。
「――っ、レイア!」
「任せて! 活力満ちよ!」
「「エールシャワー!!」」
「何……っ!?」
 ぱん、と光が弾けて傷が治っていく。本調子とはいかないが、ないよりはマシだ。

「まだまだ! 僕は最後まで自分の信念に従って行動する。誰にも邪魔なんてさせるものか! 僕たちは、あなたに負けない!」
「戯れ言を! 集え四大精霊――!!」
 マクスウェルの周囲にまた四色の光が集まった。けれど、今度のものはさっきと違う気がした。

「何度やっても同じことよ! ――エレメンタルメテオ! お前の命運は尽きた! もう終わったのだ!」
「――何が終わったって言うんだ」
 真っ向から立ち向かうジュードの目がマクスウェルを睨みつける。そんな彼の行動が理解出来ないのだろう。マクスウェルはどこか怯えているようにも見えた。


 球体が近付いてくる。やっぱり、何かが違う。どこか別のところに意識を飛ばしているような、そんな感じがした。
「っ、ウンディーネ! 契約者の名の下に伝える! 私は――私たちはここにいる! あなたのこともミラのことも救うつもりで私たちはここまで来た!」
 ぴくん、と。水の球体が一度だけ止まったように見えた。

 水面を蹴ってジュードが飛ぶ。その身体は四色の光を避け、完全に緩んでいたマクスウェルの盾にヒビを入れた。
「終わったりなんかするものか……! そんなの、あなたが決めることじゃない!」
「バカものめ! 今のお前たちは立っているのがやっとではないか。もう私に抗う力などない!」
「あるよ! 僕は――僕たちは知ってる!」

 ぱりん。軽い音がしてマクスウェルを守っていた盾が割れた。一瞬でもマクスウェルの意識が逸れたからだろうか。――繋がった。
……!』
「! こっちだよ、ウンディーネ!」

 ぱりん。今度の音は、空間が割れた音だ。水面が揺れる。そして割れ目から、一人の女性が落ちて来た。
「そうだよね――ミラ!」




2015.06.27 柿村こけら



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